telehealth consultation
遠隔健康医療相談サービスの質を確保し
利用者の信頼を得るために
業界団体であるTELEQが自主基準を策定
詳細解説
遠隔健康医療相談サービス事業者が遵守すべき自主基準は、サービス提供事業者が遵守すべき基本的なルールを定めており、業界の健全な発展と国民の信頼確保を目指しています。
以下、この自主基準の主要なポイントについて詳しく解説します。
用語の定義
遠隔健康医療相談(医師)
医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。
遠隔健康医療相談(医師以外)
医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。
サービス分類毎の論点
遠隔健康医療相談サービスは、提供形態や利用方法によってさまざまな類型が存在します。これらの分類は、サービスの特性や潜在的なリスク、必要な対策を理解する上で重要です。自主基準では、主に以下の3つの観点からサービスを分類し、それぞれの特性に応じた指針を提供しています。
- 相談対応者の属性による分類
- 医師、医師以外の専門職、専門職以外の者が対応する場合で、それぞれ求められる対応や制限が異なります。
- 相談に利用するツールによる分類
- チャット、電話、ビデオ通話など、使用するコミュニケーション手段によって考慮すべき点が変わってきます。
- ビジネスモデルによる分類
- BtoC型(個人向け)やBtoBtoC型(企業や健康保険組合等を介した個人向け)など、サービス提供の形態によって異なる配慮が必要となります。
これらの分類に基づいて、各サービス形態特有の課題や留意点を理解し、適切なサービス提供体制を構築することが求められます。以下、それぞれの分類について詳しく説明します。
相談対応者の属性による分類
医師が対応する場合
医師が対応する場合でも、診断や処方などの医療行為は行えないことを明確にする必要があります。また、自身の専門外の相談に対しては、専門外であることを伝え、適切な対応を取ることが求められます。
医師以外の専門職が対応する場合
看護師や薬剤師などの医療専門職が対応する場合、その専門性に応じた対応可能な相談内容を明確にし、相談者に理解してもらう必要があります。医学的判断を伴う回答は避け、一般的な情報提供や受診勧奨にとどめるべきです。
専門職以外の者が対応する場合
専門職以外の者は、相談者からの相談に対し、どのような内容の相談かの聞き取りを行い、専門家につなぐ受付等の一次的な対応に留まることが望ましいです。
研修等の実施について
相談対応者には、遠隔での相談に特有の留意点や適切な対応方法について、十分な教育・指導を行う必要があります。特に、医師以外の専門職が対応する場合は、定期的に医師によるチェックを行うなど、適切な対応が行われていることを確認する仕組みが必要です。
相談に利用するツールによる分類
各ツール(チャット、電話、ビデオ通話)の特性に応じた適切なサービス設計が必要です。プライバシーの確保、適切な環境整備、モニタリング体制の構築などが求められます。
ビジネスモデルによる分類
BtoC型とBtoBtoC型
BtoBtoC型の場合、相談者と、サービス事業者の契約の相手方(企業や健康保険組合、自治体、民間保険会社等)とが異なることから、個別の相談者からの相談内容を契約の相手方である企業等に開示するか否かに関する情報提供ポリシーなどを事前に取り決めておき、相談者に対して明らかにしておく必要があります。
契約類型による分類
相談対応者との契約形態(雇用契約、業務委託契約など)に関わらず、サービス事業者は相談内容の質を監督する責任があります。苦情対応や品質管理の体制を整備することが求められます。
サービスの適正な提供及び信頼確保のための仕組み
相談対応者の募集及び採用における留意点
募集時には、以下の項目を明示することが求められます
- 募集する診療科目について
- 必要とする資格について
- その他、採用の要件とする事項について
採用時には、資格の確認や面談を通じて、適切な人材であるかを慎重に判断することが必要です。
サービス提供時に必要な情報提示
相談者に対して、以下の情報を明確に提示する必要があります
- 相談対応者の属性(医師、医師以外の専門職、専門職以外)
- サービスの内容と限界(診断・処方はできないことなど)
- 個人情報の取り扱いに関する方針
情報の開示に当たっては、医療広告ガイドラインや景品表示法など関係する指針や法令等に留意する必要があります。
サービス提供に係るマニュアルの策定
マニュアルには以下の項目を含める必要があります
- オンライン診療との違いの明確化
- 受診勧奨の方法と限界
- 緊急時の対応手順
- 個人情報保護に関する指針
特に、自殺念慮を持っていると考えられる相談者への対応については、厚生労働省の「自殺対策におけるSNS相談事業ガイドライン」などを参照することが有効です。また、自殺対応事例を公開する際には、WHO(世界保健機関)の「自殺予防を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識」(いわゆる『WHO自殺報道ガイドライン』)を十分に踏まえる必要があります。
モニタリング体制の整備
以下の内容に関するモニタリング体制を整備することが必要です
- オンライン診療、オンライン受診勧奨に係る回答とそのクオリティ
- 差し控えるべき表現
- その他、遠隔健康医療相談サービスの質を確保できていない相談
- 接遇
適正な情報の取扱(個人情報やセキュリティの基本的ルール)
第三者認証について
情報セキュリティや個人情報保護に関する第三者認証(ISO/IEC27001、プライバシーマークなど)の取得を検討し、適切な情報管理体制を構築・維持することが重要です。
相談者の個人情報の取り扱いについて
個人情報の取得・利用・保管・廃棄に関する明確な方針を定め、相談者に対して適切に説明し、同意を得る必要があります。また、児童虐待や自殺等の志願者であることがうかがえたような場合に備えて、利用規約等において必要時の公的機関への個人情報の提供を予め記載しておくことが望ましいです。
関連法規・ガイドライン
遠隔健康医療相談サービスに関連する主な法令及び行政通知には以下のものがあります
- 医師法、医療法、個人情報保護法、健康増進法、景品表示法など
- 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(厚生労働省)
- 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(厚生労働省)
- 「医療広告ガイドライン」(厚生労働省)
各事業者は、これらの法令やガイドラインを遵守しつつ、適切なサービス提供に努める必要があります。
遠隔健康医療相談サービス事業者向けチェックリスト
自主基準をもとに、チェックリストを作成しました。下記をクリックし、詳細を確認してください。
サービスの基本要件
- サービスが診断や治療ではなく、健康相談の範囲内であることを明確に説明している
- 相談対応者の属性(医師、医師以外の専門職、専門職以外)を明示している
- 利用規約に「診断」「治療」「処方」ができないことを明記している
- ビジネスモデル(BtoC型、BtoBtoC型)に応じた適切な情報管理を行っている
相談対応者の質の確保
- 相談対応者の募集・採用基準を明確に定めている
- 募集要項に必要な資格、経験、役割等を適切に提示している
- 相談対応者の資格確認を適切に行っている
- 採用後の教育・研修プログラムを整備している
- オンライン診療ガイドラインに基づく教育を実施している
- 定期的な評価とフィードバック体制を構築している
- 医師以外の専門職が対応する場合の制限(個別的な状態を踏まえた医学的判断の禁止)を明確にしている
サービス提供体制
- 利用するツール(チャット、電話、ビデオ通話)の特性に応じたサービス設計を行っている
- プライバシーに配慮した相談環境を整備している
- 相談対応者用のマニュアルを整備し、定期的に更新している
- オンライン診療との違いを明確に説明している
- 一般的な受診勧奨と個別的な医学的判断を伴う受診勧奨の区別を明確にしている
- 特定の医療機関や医師を勧める場合、複数の選択肢を提示している
情報提供と同意取得
- サービスの内容と限界について、相談者に明確に説明している
- 相談対応者の属性や専門性について適切に情報提供している
- 相談開始前に相談者から同意を得る仕組みがある
- 相談時に使用する表現(差し控えるべき表現、留意すべき表現)についてのガイドラインを整備している
モニタリングと品質管理
- 相談内容のモニタリング体制を整備している
- チャット、電話、ビデオ通話それぞれに適したモニタリング方法を定めている
- 不適切な対応があった場合のフィードバック体制がある
- 相談者からの評価や満足度を把握する仕組みがある
- 相談内容の記録と適切な保存方法を定めている
情報セキュリティと個人情報保護
- 情報セキュリティに関する第三者認証を取得している(または同等の運用を行っている)
- 個人情報保護に関する第三者認証を取得している(または同等の運用を行っている)
- 相談者の個人情報の取得と管理に関する方針を明確にしている
緊急時の対応
- 緊急性の高い相談への対応手順を定めている
- 必要に応じて医療機関への受診を勧める基準を設けている
- 児童虐待や自殺念慮など、公的機関への通報が必要な場合の手順を定めている
- 自殺念慮を持つ相談者への対応に関するガイドラインを参照し、対応手順を整備している
- 自殺対応事例を公開する際、WHO自殺報道ガイドラインを遵守している
業界団体との連携
- 業界団体の自主基準を遵守している
- 業界団体が提供する研修や情報提供を活用している
- サービスの質向上に向けた業界全体の取り組みに参加している
- 将来的な業界団体の認証制度への対応準備を行っている
継続的な改善
- サービスの質を定期的に評価し、改善する仕組みがある
- 新たな技術や規制に対応できる体制を整えている
- 相談者やステークホルダーからのフィードバックを収集し、サービス改善に活かしている
新技術への対応
- 2024年8月に策定された生成AI利用に関する声明を理解し、適切に対応している
- 新技術導入時のリスク評価と対策を行っている
よくある質問
遠隔健康医療相談サービス事業者向けの自主基準に関するFAQです。
Q
この自主基準は法的拘束力がありますか?
この自主基準には法的拘束力はありませんが、業界の健全な発展と国民の信頼確保のために、全ての事業者が遵守することが強く推奨されています。
Q
自主基準を遵守していることをどのように示せばよいですか?
自社のウェブサイトや利用規約に自主基準の遵守を明記し、具体的な取り組みを公開することが推奨されます。将来的には、業界団体による認証制度の導入も検討されています。
Q
医師以外の専門職が相談に対応する場合、どのような制限がありますか?
医師以外の専門職は、その専門性に応じた対応可能な相談内容を明確にし、一般的な情報提供や受診勧奨にとどめる必要があります。個別的な状態を踏まえた疾患の罹患可能性の提示や診断等の医学的判断は行えません。
Q
相談対応者の質をどのように確保すればよいですか?
明確な募集・採用基準の設定、資格の確認、採用後の継続的な教育・研修の実施、定期的な評価とフィードバック体制の構築が求められます。また、医師による定期的なチェック体制の整備も重要です。
Q
生成AIの利用に関する指針はどのようなものですか?
2024年8月の改訂で追加された指針によると、生成AIは相談対応の補助ツールとしてのみ利用可能で、直接的な相談対応への使用は禁止されています。AI利用に関する明確な説明と同意取得、人間による最終確認が必要です。
Q
個人情報の取り扱いについて、特に注意すべき点は何ですか?
個人情報の取得・利用・保管・廃棄に関する明確な方針を定め、相談者に説明し同意を得る必要があります。また、児童虐待や自殺の恐れがある場合の公的機関への情報提供について、利用規約等で事前に定めておくことが望ましいです。
Q
モニタリング体制はどのように整備すべきですか?
オンライン診療やオンライン受診勧奨に係る回答の質、不適切な表現の使用、接遇などについて、定期的にチェックする体制を整備する必要があります。チャット、電話、ビデオ通話それぞれに適したモニタリング方法を定めることが重要です。
Q
緊急性の高い相談にはどのように対応すべきですか?
緊急性の高い相談への対応手順を予め定めておく必要があります。必要に応じて医療機関への受診を勧める基準を設け、児童虐待や自殺念慮など公的機関への通報が必要な場合の手順も整備しておくべきです。
Q
サービス提供時に相談者に対してどのような情報を提示する必要がありますか?
相談対応者の属性(医師、医師以外の専門職、専門職以外)、サービスの内容と限界(診断・処方はできないことなど)、個人情報の取り扱いに関する方針を明確に提示する必要があります。
Q
自主基準は今後どのように更新されていく予定ですか?
技術の進歩や社会のニーズの変化に応じて、定期的に見直しと更新が行われる予定です。特に新技術の導入や法規制の変更があった場合には、迅速に対応することが想定されています。
遠隔健康医療相談サービス事業者が遵守すべき自主基準
一般社団法人遠隔健康医療相談適正推進機構が公表している遠隔健康医療相談サービス事業者が遵守すべき自主基準 第1.1版です。2022年7月(2024年8月一部改訂)